今日も今日とてマイルームは、サーヴァント悩み相談室として解放され、様々な頼みごとを抱えたサーヴァントたちが、私、ぐだ子の助力を求めて廊下に列を作っていた。
大抵は頼まれごとを私が安請け合いをして終了なのだけど、今日はめずらしくガチの悩み事を抱えたサーヴァントが一人…。
ぐだ「沖田さん、クマできてるけど、昨日のTRPG会って何時までやってたの?」
沖田「人狼の後は、クトゥルフ神話というので盛り上がりまして、気が付いたら朝でしたよー」
ぐだ「そうなんだ。あれも楽しいよね、次は私も最後までいたいなぁ。…って、ごめん、相談だったよね」
沖田「はい…、実は…、クトゥルフやってて思ったんですけど、最近、いうなれば沖田さんのSAN値的なモノがどんどん下がっていっているような気がしていて…」
ぐだ「狂気に陥ってる気がするってこと?」
沖田「そうなんです!最近ノッブといると、SAN値がガリガリ削られる気がするんですよ!」
ぐだ「ノッブに宇宙的恐怖な側面を見ちゃったってこと?」
沖田「いえ…、ノッブは常にノッブなので、恐怖とかそういうことは無いんですけどその…、どういう訳か一緒にいると胸がざわつくと言いますか…」
ぐだ(あ…、これ、恋煩いかな…?)
ぐだ「…抱きしめたくなる、とか?」
沖田「まさか!ノッブなんか抱きしめてどうするんですか!沖田さんはただノッブの匂いを嗅ぎたくなるだけです!」
ぐだ(恋煩いだな!ていうかそっちの方がヤバいと思うよ沖田さん…)
ぐだ「そっか、まぁ、ノッブはいい匂いしそうだし、アビゲイルと同じサイズだし、ちょっと嗅ぎたくなっても無理は無いんじゃないかな?」
沖田「確かにアビゲイルさんは抱っこしたらふんわりいい匂いがして和みそうですが、ノッブのはそういう可愛らしいとかのじゃないんです…」
ぐだ「というと?」
沖田「……この前レイシフト先でわんこの大群に遭遇しましたよね…」
ぐだ(あー、ノッブがやたら懐かれて揉みくちゃにされてたアレかぁ。バーッて走ってきたわんこがノッブの股にズボッて鼻突っ込んだ時は、令呪を使ってでもわんこたちを火縄銃から守らないとって思ったっけ…)
ぐだ「……えっと…、沖田さん、まさか…」
沖田「はい!犬の嗅覚でノッブを嗅ぎまくりたいなと!」
ぐだ「うん!下がってるね!SAN値ガッツリ下がってるね!」
沖田「うわーん!!やっぱりそうですよねえええ!!!」
ぐだ(ある意味ではまぁ正常な反応だけど、沖田さんが嗅ぎまくりたいとまで言っちゃってる事がヤバイ…、それにストレートに恋煩いなんて教えたらノッブが刺し傷だらけになりそうだから、ここはSAN値ってことにしておこう…)
沖田「沖田さん、このまま永久的狂気に陥っちゃうんでしょうか…?ノッブとは部屋が同じですし、四六時中顔を合わせているので、そうなるのも時間の問題な気がして…」
ぐだ「うーん、でも狂気に陥ったとしてもその症状なら、最悪ノッブに飛びついて嗅ぐだけですむんじゃないかな?」
ぐだ(たぶんすまないけど…)
沖田「それだけは絶対に避けたいです…、そんなことになるくらいなら今この場で潔く腹を切ります…」
ぐだ「ごめん!ごめん!今のなしで!刀しまって!えーと、えーと、じゃあ、本人じゃなく、服を嗅ぐとかは?あのマントとか!」
ぐだ(私は何を言っているんだろう…)
沖田「マントは火薬の匂いが強くて、あんまりノッブの匂いしないんですよね…」
ぐだ(犯行後だった!)
沖田「いつもの軍服もクソダサTシャツも水着も部屋着も肌着も下着も嗅いでみたんですけど…」
ぐだ(すでに狂気!)
沖田「どれも今ひとつ違ったので、全部枕に着せて人型にしてみたりもしたんですけど、それでも…」
ぐだ(病院が来い!)
ぐだ「そ…、そっかー、困ったねー、ナイチンゲールさんって頭の方も消毒できるんだっけ…?」
沖田「マ…、マスターから見るとそんなにヒドイですか?…で、でも、そうですよね、犬の嗅覚がうらやましいなんて、普通考えませんよね…」
ぐだ「え、そっち?嗅ぎたい衝動じゃなくて?」
沖田「それも困ってますけど、そっちはまぁバレなければ良いだけなので…。ノッブもたまに沖田さんの羽織とか枕とか抱いて寝てますし…」
ぐだ「え?ノッブは堂々と嗅いでるの?」
沖田「好きな匂いなんだそうですよ。気持ち悪いのでやめてほしいんですけどね…」
ぐだ(聞く限り沖田さんの方が気持ち悪いレベル高いけどね!?)
ぐだ「えーと、それで沖田さんはどうしたいんだっけ?犬になりたいんだっけ?」
沖田「いえ、これたぶん、ノッブから発生してる匂いが原因だと思うので、アイコンをマスターのみたいな鼻のないタイプに変えてほしいんですよ。なんだったらこの頭がおかしくなった時空の沖田さんを丸ごと抹消して、初期の可愛らしい沖田さんに戻してもらうのでも構わないです」
ぐだ「唐突なメタ発言ヤメテ!」
沖田「最近このキャラのせいか、支部の反応もイマイチですし…」
ぐだ「ヤメテ!支部がイマイチなのはイマイチなの上げたからで沖田さんのせいじゃないよ!」
沖田「でなければ、ノッブの時間だけが止まるストップウォッチとかで直接…」
ぐだ「見てるモノがバレるからヤメテ!ていうか直接嗅ぎたいなら、寝ぼけたフリして布団にもぐりこむとかそういうので良くない?」
沖田「は!な、なるほど、その手がありましたか…!寝ぼけてたなら仕方ないですもんね…!」
ぐだ「もう沖田さんの基準がわからないけど、うっかりエアコンの温度を下げちゃって、寝てたら寒くなったからとかそういう理由をつけるのも良いと思うよ!」
沖田「それいいですね!それならノッブの方から沖田さんの布団に来るかもしれませんよ!」
ぐだ「じゃあ、解決ってことでいいかな?」
沖田「バッチリです!」
ぐだ「よかった…、ホントは頭のお薬とか出してあげたいところなんだけど、今はこれが精いっぱい…」
沖田「やっぱり沖田さん、お薬必要です…?」
ぐだ「あー、いやー…。ハッ、そうだ!根本的に解決できるアイテムなら出せるかも!」
沖田「根本、ですか?」
ぐだ「サラサラサラ~…。…よし、じゃあこれを二人の部屋のどこか、ノッブじゃないと見つけられなそうなところに置いておいてみて。くれぐれも沖田さんは中を見ないようにね!」
沖田「よくわかりませんけど、わかりました~、早速置いてみますね、ありがとうございます!」
そういうと沖田さんは、私が入れ知恵した手段を早く試したいのか、ワープで部屋まで帰っていった。
そして数日後…。
信長「うおおおい!マスター!おるかー!?」
ぐだ(あ、あれ見つけたのかな?)
ぐだ「ノッブ?どうしたの?」
信長「へ…部屋に、わし宛の、こ…恋文ががががががががg…」
ぐだ(見つけてるけど、なんか思ってた反応と違う!!!)
ぐだ「そ、そっかー、へー。で、でもノッブってそういうの貰い慣れてそうなのに、そんな狼狽えるの意外だなー…、なーんて…」
信長「それはもちろん慣れとるんじゃが、これは寝室の枕の下にあったんじゃ!」
ぐだ(それは怖い!沖田さん何してんの!)
信長「しかも沖田の枕の下じゃぞ!こんなもんどうすりゃええんじゃ!」
ぐだ「え?ノッブ、なんでそんなところにあるの見つけたの?」
信長「沖田の枕を抱き枕に昼寝を…、ってそんなことはどうでも良い!中身を見てみろ!」
『織田信長さま、私はカルデアに召喚されて以来、ずっとあなたを恋慕っております。どうしてもお伝えしたかったのですが、面と向かって言うのが恥ずかしいので、文にしたためることにしました。あなたの気持ちを知るのが怖いので、名前は明かさないでおこうと思いますが、どうか頭の片隅にでも私のあなたへの想いを留めておいていただけたらと思います。』
ぐだ「……うん、恋文だね…」
信長「なんでこんなもんが沖田の枕の下にある!?」
ぐだ「んー、書いたは良いけど渡す決心がつかなかったとか?」
信長「あの脳筋が文など書くものか!書いたとしてもこんな丸い字ありえんじゃろ!」
ぐだ(すみません、そこまで考えが及びませんでした…)
信長「代筆ということも考えられなくはないが、沖田からではないということも十分ありえるじゃろ!」
ぐだ(わぁ…、ヤメテ…、そっちの可能性考え出すとすこぶるめんどくさい事態に陥りそう…)
ぐだ「あー…、ここはもう、沖田さんのだって路線で話進めよう?」
信長「路線!?」
ぐだ「そうだー、お返事書いてー、元に戻しておくってどうかなー?マスターそれが良いと思うなー」
信長「お返事、じゃと…」
ぐだ「ノッブはー、その手紙ぃー、沖田さんからだったらなんてお返事するー?」
信長「む…、うーむ、ま、まぁ、やぶさかではない…、とかかの…」
ぐだ「じゃあじゃあ、その気持ちをここに書いて、封筒にしまって、沖田さんの枕の下にそっと戻しておこう?」
信長「そ、そうか…、うーむ、ハンコはないからサインで良いかの?」
ぐだ「そうそうそう、下の受領のところにねー。…って宅配便か!…そうじゃなくてなんかこう、好意が伝わるような文章じゃないと!」
信長「よ…、よきにはからえ…?」
ぐだ「殿様か!」
信長「殿様じゃが!?」
ぐだ「そうだった…。えー?ていうか、えー?どうなってるの??ノッブって生前は相当色んな人と遊んでて、こういうのには慣れてるんだとばかり思ってたんだけど…」
信長「そりゃ閨事には慣れとるが…、その、なんじゃ…、現代の恋愛的なそれこれは…、な…」
ぐだ「え?まさか未体験ゾーン?」
信長「し…、仕方なかろう…?…生前は気に入ったら伽を命じるだけで良かったんじゃから…」
ぐだ「まさか、初恋…?」
信長「そういうわけではないが…、いかんせん勝手が違うというか…」
ぐだ「まぁまぁ、なんにしても恋はホラ、実らせないといけないし!ここはその思いの丈を情熱的にぶつけよう?ね?ノッブだって、なんとなーく沖田さんからの好意とか感じてるんじゃないの?」
信長「う…む、まぁ、あやつは前からわしの服やら何やらを持ち出したがるし、最近はやたらとわしの布団に入って来るが…。おぉ、そうじゃ、全部知っとるぞー的なことを書くのが良いかもしれんな!」
ぐだ「ノッブも沖田さんが好きって書くの忘れないでね?」
信長「む…、わかっておるわ…。うーむ、なんと書いたものかのう、洒落た言葉では伝わらんじゃろうし…」
ぐだ「あー、それはー、部屋でー、ゆーっくり考えた方が良いんじゃないかなぁー…」
信長「そうかのう?」
ぐだ「そうそう、頑張って考えて!応援してるから!」
どうにかノッブを追い返すことに成功した私は、冷や汗を拭いながらため息をついた。
ああいう手紙を仕込めば、あとは経験豊富なノッブがまるっと解決してくれるかと思ってたけど見事にアテが外れてしまったなぁ…。そんなことを思いながら私は天井を仰ぐ。
恋という字は、変という字に似ているとは言うけれど、まさか自分がそんな状態を作り出してしまうことになろうとは…。
まぁ、両想いみたいだから、そのうちくっつくだろうし、それまでしばらく隠れていた方が良いかもしれない。早速誰かを誘ってどこかへ行こう。
私は足早に部屋をあとにした。
SAN値って単語を使いたいだけで、昼休みとかトイレタイムにちょこちょこ書いたらちょっと長くなったヤツ。SAN値の使い方間違ってるし、メタ発言がアレなので、ここにしか乗せられないものになってしまった。
アイコンはあとでつけます。たぶん。
書いてるときは爆笑だったけど、読み返すと「すん…」って感じです(ヤケクソ)
他の沖ノブ、ノブ沖作品はこちらへ。
沖ノブ、ノブ沖作品1話リンクまとめ
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