2022
6
Jul

百合小説

創作百合小説チート主人公ファンタジー「魔王の飼い犬」11


ハイエナ設定使用のオリジナルの百合小説です。
Kindleから出版している『ネコサマ魔王とタチワンコ』の続編で、第十話の続きになります。

第十話までのあらすじは以下のような感じです。

風呂から出たフューリたちは焚き火を囲んで豪勢な夕食を摂る。身の上を聞かれたり、みんながダンジョンについての感想を言い合うのを聞いたりするうちに食事会は終わり、イラヴァールへと戻るオルナダたちを見送った。

【登場人物一覧】
フューリ:元狩人でオルナダの飼い犬。人狼とヒューマーのハーフ。
オルナダ:イラヴァールの国王的魔族。
シシィ:フューリの友人のヒューマー。
ガーティレイ:調査パーティメンバーのオーガ。
ルゥ:調査パーティメンバーの人兎。
ヴィオレッタ:調査パーティメンバーのダークエルフ。
キャサリーヌ:調査パーティの指導教官。オーガとエルフのハーフ。
ティクトレア:イラヴァール大臣的魔族。
ヒーゼリオフ:ランピャンのダンジョンマスターをしている魔族。
ケイシイ:ティクトレアの飼い犬をしているエルフ。
ユミエール:オルナダの右腕的エルフ。
ブゥプ:ユミエールの部下の人兎。

以下十一話です。


一週間の調査活動は、存外に過酷だった。
二日目からはキャサリーヌの指導の元で進むようになったためだ。僕らは僕が初日、意図的に避けていたルートを進まされたり、その日その階にいる一番強力な生物を倒さないと下の階には進めないようになった。おかげで五階にさえ到達できない日もあった。
パーティの編成も戦闘のたびに変えさせられ、初日にベストと判断した編成で挑めたのは最終日だけだった。機能する編成のときは良かったが、どうにもならない編成が続いたときは、みんな上手く動けず、度々ピンチに陥った。その上、僕は一切の攻撃行動を禁じられたので、チャンスがあっても獲物を仕留められなくなった。
たぶん誰かが負傷していることを想定しての訓練や、各ポジションでの立ち回りを覚える訓練を兼ねてのことだったのだろうけど、キャサリーヌはなんの説明もしなかったので、みんな次第に「なぜこんなことをやらされるのか」と不満を顔に出すようになり、パーティの空気もピリピリしていった。
ヘトヘトになって地上に戻ると、食事は初日に比べて格段にグレードが下がっているし、風呂は常に芋洗い状態だしで、メンバーたちは日に日に疲労とストレスを蓄積していった。ガーティレイは始終不機嫌オーラを放つようになり、他は無口になった。
僕はといえば、子供の頃から母さんに無装備で森に放り込まれたりしていたおかげか、特に疲れもなく、みんなほど環境にストレスを感じることもなかった。しかし、オルナダ様の顔が見られないことだけは辛かった。イラヴァールにいれば匂いを辿って毎日朝晩の挨拶に行けたのに、ここではそれができない。北から吹く風がオルナダ様の匂いを運んで来ないか、ふんふんと空気を吸い込むことしかできないのだ。
オルナダ様の胸に顔を埋めて、思い切り息を吸い込んで、頭を撫でてもらいたい。そんな思いが日増しに強くなり、二日目の朝に竜車に乗り込んで、さっとイラヴァールへ戻ったケイシイが心底羨ましくなった。
そういうわけで僕は、最終日の今日、ダンジョンの二十階から地上へと戻るやいなや、全速力でイラヴァールへ向かって走り出した。キャサリーヌ以外は「正気か!?」と声を上げて「明日の朝、みんなと竜車で戻ったほうが良い」と止めたけど、僕は聞かなかった。
雨の降る真っ暗な砂漠を一時間ほどで走りきり、寮の部屋でスライムに浸かって身体を綺麗にした。オルナダ様にもらったシルクのローブを着て、匂いのするほうへ向かう。外は横殴りの雨が振り、遠くでゴロゴロと雷がなっていたけど、僕はいろんなことを期待してウキウキとしていた。
オルナダ様の匂いは、なぜか寮内の自室ではなく、地下へ降りる階段から香っていた。ティクトレアとヒーゼリオフの匂いもするからきっと一緒にいるんだろう。もしもお楽しみ中だったら、回れ右をして自室に帰らないとなと僕はがっくり肩を落とした。それでも戻ったからには挨拶に行かなくては。僕はトントンと折り返し階段を降りていく。だけど降りても降りてもなかなか匂いの元には辿り着かない。一体どれほど深いのかと思い始めた頃ようやく底が見えた。
底の壁には頑丈そうな分厚い鉄の扉がついていた。ノックをして声を掛けると、中から「ひゃ!」と悲鳴が上がった。ぎょっとした僕は「失礼します、入ります」と声をかけて、バッと扉を開けた。中からむわっ、と強烈な魔香が漏れして、一瞬くらっとなった。
室内は娯楽室と寝室を足したような作りで、酒瓶が並んだ小さなバーと、ボードゲームが置かれた長テーブルと、天蓋付きの大きなベッドが置かれていた。ベッドの上には数本のボトルが転がり、真ん中には丸パンみたいに膨らんだ布団がひとつ乗っていた。オルナダ様たちの匂いはその中からした。
「オルナダ様? オルナダ様、大丈夫ですか?」
「お、おい! や、やめろ、引っ張るな! ぎゃあああああ!!」「きゃあああああ!!」「ひゃあああああ!!」
僕が無事を確認しようと布団を引っ剥がすと、オルナダ様たちは絶叫してベッドから転がり落ち、物凄い素早さで僕のお腹にしがみついてきた。オルナダ様は正面から、ティクトレアは左側から、ヒーゼリオフは右側からぎゅっと抱きつく。三人とも額から脂汗を流し、青い顔をしてブルブルと震えていた。
「ど、どうしたんですか? 誰か……。そ、そうだ、お医者様のところへ……」
「や、やめろ! ここから出るな!」「て、ていうか、布団! 早く布団被んなさいよ!」「その前に! その前に早く座って! 空から離れてぇぇぇ!!」
「えと……、でも……」
「「「病気とかじゃないから! 健康だから!!」」」
病気を疑い医療施設へ走ろうとすると、三人に一斉に止められた。言われるままベッドに座り、頭から布団を被ると、濃厚な甘い香りが中に籠もった。
「あの、一体どうしたんです?」
「ふぅ、ふぅ……。いいか、フューリ。魔族にも苦手なものはあるん……、ぅひっ!」
「そ、その通りよ。大体のとこは完全無欠だけど、ひゃぁぁぁああ!!」
「ッか、雷だけはどうしても苦手なの……。万一大きいのに当たったら、魔力を全部消滅させられて即死だか……、きゃあッ!!」
なるほど、それでこんなに怯えているのか。僕は納得すると共に気の毒な気持ちになり、腕を回して三人の背中をまとめて擦った。
魔族はエルフの百倍以上の魔力を持ち、どんな魔法も攻撃も通じない上に寿命もない、ほとんど不死の種族だ。当然、死を意識する機会もまるでない。そのため唯一、自分たちを殺し得る、自然の雷に対して極端な恐怖心を抱くのだと、三人が全身を震わせながら説明してくれた。
「もう! なんでこんな災害だらけのトコに街なんか作ったのよーーー!」
「だから誰も手を付けてなくて、作りやすかったんだろうがーーー! 文句があるなら帰れば良かったろうーーー!! そもそも来なきゃ良いだろうぎゃあああーーー!!」
ヒーゼリオフが僕が抱いたのと同じ疑問をオルナダ様にぶつけ、オルナダ様が怒鳴り返すと、遥か頭上で落雷の音がした。三人ともビクリと身体を竦め、ますます僕にしがみついた。
「あの……、大丈夫ですよ。こんな地下深くまで雷は来ないですよ」
「わわわ、わかってはいるんだがな……」
「ほ、ほほ、本能的に来るものがあるから、どうしようもないの……」
「あああああーーーーー!! 今の! 今の近かった! 近かったあああ!!」
なんとか三人を励まそうと声を掛けるけど、相当雷が怖いらしく、まるで効果がなかった。
「もう少しお酒を飲んではどうですか? 気持ちが落ち着くかもしれませんし。もし雷が来たら、僕がこのまま走って避けますから」
「そそそ、そうだな。ままま、まだ酒が足りない……」
「ででで、でも手は離さないでね? ちゃんと、しっかり、ぎゅっと抱いててね?」
「ももも、もし離したりしたら、一生恨んでやるんだから!」
「大丈夫ですよ。ちゃんと抱っこしてますから」
「うわわわわわっ!! ダ、ダメだ、立つな! 空に近付けるんじゃないいいいい!!」
三人を抱えたまま、ベッドを降りようとしたけど、オルナダ様が立ち上がらないようにと言うので、限界まで腰を落としてバーカウンターへ向かった。頭から布団をかぶっているので前が全く見えない。体勢的に転ぶことは考えにくいけど、万が一にも躓いたりしないよう慎重に足を進めた。
移動する間にも、オルナダ様たちは地上に響く雷鳴に怯え、肩を震わせる。その姿に気の毒な気持ちと共に、愛しさが湧く。幼い頃、僕がおばけを怖がると母さんはどこか嬉しそうな顔をしていたけど、こんな気持だったのかもしれないなと思った。頭がふわふわとして、気持ちがいい。オルナダ様を高い高いして、くるくると回りたい気分だった。
「むふふふふ……。なに飲みますかぁ? どれでも僕が取りましゅよぉ~、見えないですけどぉ。ふふふ~」
楽しくなってきた僕は、胸に顔を埋めるオルナダ様の頭に鼻を擦り付ける。甘く、それでもどこか爽やかな、良い匂いがする。僕の大好きな匂いだ。胸いっぱいに吸い込むと、ますます頭がふわふわとした。
「うふふ~。ぷるぷるしてるオルナダ様もカワイイですねぇ~。ふふ~」
「お、おい、フューリ? お前、なにか変だぞ?」
オルナダ様がぎゅっと首を縮めたまま僕を見上げる。見開いた目に涙が溜まっている。見たことのない表情だ。新しい発見に嬉しくなった僕は、オルナダ様のおでこにチュと唇をくっつけて頬擦りをした。
「オルナダさまぁ~、ぼく、いっしゅうかんもあえなくて、さみしかったですぅ~」
「お、お前、酔ってるな!? 酔ってるだろ!?」
「ふえ~? よってないれすよぉ。おるにゃだしゃまがよわなくしてくれたじゃないれすかぁ~」
魔香酔いの症状は主に、目眩、吐き気、頭痛、視覚や平衡感覚の異常、意識の混濁、性的興奮、記憶喪失などだ。今はちょっと楽しくて、踊り出したい気分なだけで、そういった症状は出ていない。オルナダ様はたまにおかしなことを言うなぁと思った。
「おい! こら! やめろ! 回るな!! 完全に酔ってるだろ!! 止まれえええええ!!」
「えへへ~、おるにゃだしゃまぁ~、たのしいれすねぇ~」
「くっ……、ダメだ! 魔族三人抱えて布団被ってるせいで、べろんべろんになってる! おい、お前らどっか行け!」
「はあああ!? アンタが離れれば良いでしょ!!」
「そうよ! わたくしは意地でも離れませんから!」
「あれれ? けんかはらめれすよ?」
オルナダ様たちは僕にしがみついたまま、なぜかお互いをぽこぽこと殴り合う。三人まとめて抱っこしているせいで、抱かれ心地が良くないのかもしれない。
「そうら、こうしたらひとりじゅつだっこれきるのれ、けんかやめれくらひゃい……」
「ぎゃあああああ!! やめろフューリいいいいい!!」
「ちょ、オル!! なんとかしなさいよおおお!!」
「だからやめろって言ってるだろおおお!! こいつが言うこと聞かないんだ、俺のせいじゃなあああああい!!」
「あなたの犬でしょ、なんとかしてえええええ!!」
僕は布団を頭から振り落とし、空中に二人を放り投げる。そして二人が宙にいる間、一人を抱っこすることにした。こうすれば一人ずつ順番に抱っこできるから、ケンカにならないはずだ。三人とも歓声をあげて楽しんでくれている。僕も楽しい。
「とーう、やーあ、たかいたかーい!」
「や、やめ、やめなさーーーい!!」
「な、なげ、投げるのはやめてえええええ!!」
「うわ! ひい! クソ……、かくなる上は……!!」
何周目かで落ちてきたオルナダ様は、受け止める前に僕の首に抱きついて、強引に唇を塞いだ。口内にとろりとした甘い液体を注がれる。大量の魔力を含むオルナダ様の唾液だ。こくんと飲み込むと、お腹から全身に魔力が染み渡る。美味しくて美味しくて、夢中になって差し入れられた舌に応えた。上からなにかがドサドサと肩に落ちてきたけど、僕は気にせずオルナダ様を抱きしめて口付けを続ける。続けるうちにだんだんと、ふわんふわんとしていた頭がスッキリとして、僕は慌てて唇を離した。
「あ、あの……、オルナダ様。その、ひ、人前ですよ……」
「やかましい。お前が酔っ払うからだろうが! 今すぐ座って俺たちを空から離せ」
言われて即座に僕はその場にあぐらをかいて座った。肩に掴まっていたティクトレアとヒーゼリオフがもそもそと正面に移動して、再び抱きついてくる。
「す、すみません、僕……。ちゃんとご飯は食べてきたんですけど……」
「はぁ、はぁ。まぁ、魔族三人分の魔香を嗅がされては、食事から摂る魔力では足りないということだな……。口を開けてろ、今夜は一晩中、俺の唾液をくれてやる……」
「はい……。……って、え!? いや、その、そんな、それってつまり、このお二人の目の前でまた今のを……!?」
反射的に「はい」と答えてしまったが、よくよく考えるとそんなの恥ずかしすぎて、とても無理だ。一晩中キスできるというのは嬉しくて「ひょわあぁぁぁぁ」だけど、二人きりでないというところは「ひゅうぅぅぅぅん」だし、その上人前でなんて「うひゃあああああ」である。無理すぎて無理無理の無理なのだ。
しかしオルナダ様は上から僕の頭をガッチリ両手で掴んで、
「黙れ。別にこいつらのを飲ませたって構わないんだぞ? それを俺が一人でやってやると言っているんだ。良いから、口を、開けろ」
と額に脂汗を浮かせて僕を睨んだ。頭を掴んだ両手も、胴に巻きつけた脚も、ぶるぶると震えている。これほど恐怖に苛まれてなお、オルナダ様はまだ性的な経験の浅い僕を気遣ってくれている。応えなくては飼い犬失格というものだろう。僕は大人しく口を開けて、オルナダ様を受け入れた。
「ん……、ちゅっ……、ふ……。はぁ、言い忘れたが、これでまた酔ったら、ちゅく……、もっとすんごいことするから、ふぅ、覚悟しておけよ。ちゅぶっ……」
「んむ、ふぁひ、ぺちゅ……」
〝もっとすんごいこと〟ってなんだろう? アレをソコにするソレするヤツだろうか? いや、ソコをコレでアレするヤツかもしれない。二人きりなら是が非でもだけど、この状況でソレするのはやっぱりアレだ。
僕は今度こそ酔っ払わないようと気をしっかり持って、オルナダ様の唇と舌と唾液を吸い続けた。やがて地上から雷鳴が消え、雨音が止むまで延々と。


第十二話公開しました。

雷が怖いってなんかカワイイですよね。雷が鳴ると飼い主にべったりする犬とか猫とかたまりません。最近の爆弾低気圧のときの雷とかは人間も普通に怖いですが。

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百合ドリル

 
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