2022
24
Jun

百合小説

創作百合小説チート主人公ファンタジー「魔王の飼い犬」8


ハイエナ設定使用のオリジナルの百合小説です。
Kindleから出版している『ネコサマ魔王とタチワンコ』の続編で、第七話の続きになります。

第七話までのあらすじは以下のような感じです。

独断専行したガーティレイとヴィオレッタの魔物の仕留め方に問題があったため、一同はフューリをリーダーとした編成で足並みをそろえてダンジョンの奥へと進むことになる。そして出くわしたオオトカゲを連携して仕留めるが、フューリ以外のメンバーは周りを毒蜘蛛に囲まれていたことに気付かず、フューリが単独で駆除し、結果一人だけ褒められることになった。

以下八話です。


調査を進める中で僕らは様々な生物に遭遇した。
動物、魔物、なにかに似てるヤツに、まるで見たこともないヤツ、色々いた。多いのは虫系で、次に多いのは爬虫類系、ネズミやコウモリに似た感じのも何度か見かけた。
パーティーの連携は次第に良くなり、スムーズに獲物を狩ることができた。ただ残念なことに、獲物に逃げられてしまったり、そもそも二体以下しか遭遇しなかったりで、三体以上狩ることはできず、肉の収獲はゼロだった。
せめてあと一頭、できれば大物を狩りたいところだ。そんなことを考えて十階へ続く階段に向かうと、なぜか下から青々とした草の匂いが吹き上げてきた。階段の先が煌々と明るい。降りてみると、そこは見渡す限りの草原だった。
わぁ、と思わず声が出た。
まっすぐな緑の地平線の上に転々と樹木が乗っていて、その上には澄んだ青空が広がっている。故郷の一番高い山の頂上に立ったときのような開放的な景色だ。様々な獣と植物の匂いがして、土地の豊かさが全身に広がるみたいだった。暑くも寒くもないし、吹き抜けていく風が心地いい。草の上に寝転がって転げ回りたくなる。
オルナダ様とここで一日ピクニックができたらどんなに幸せだろう。僕はほぅと息を吐きながら、くるくると辺りを見回した。
「はぁ~、これが同期空間ってヤツか~。実際目の当たりにすると、なんつーか圧巻だな~」
「あぁ、そっか。これがそうなんだ……」
同期空間というのは、ある場所に別の場所を同時に存在させた空間のことで、主にダンジョンで見られる特殊な魔術らしい。地底で暮らしていた古代の魔族が、娯楽のために作ったものだと言われている。冒険小説で読んで言葉だけは知っていたけど、まさか実在するとは思わなかった。
「この空間は相当広いですわね。十階の探索は明日にして、今日は引き返しますわよ」
オルナダ様たちと一緒に姿を表したキャサリーヌが、帰還を宣言すると共に休憩の指示を出した。シシィが「えぇ~」と不満そうな声を出して、残りのメンバーはため息と一緒に草の上に転がった。
ヒューマー以外の種族は、魔力や力は強いがスタミナに難がある。そのため僕らは五階あたりの、まだ全員元気だったときに一度引き返そうとした。しかしキャサリーヌが、自分たちがついているし、今後の調査に余裕をもたせるため、十階までは進むようにと言ったのでここまで来たけど、やっぱりちょっと無理があったようだ。特にガーティレイとヴィオレッタは、謎の張り合いで無茶をしていたので、今は完全にスタミナ切れといった様子で地面に寝転がっている。
だけどこんなに獲物が豊富そうな場所で、なにも狩らずに帰るというのは非常に惜しい。
「あのぅ、僕、まだ元気なので、その辺見てきても良いですか? というかちょっとだけ狩りを……」
恐る恐る尋ねてみた。
「お主なら心配ないでしょう。構いませんわ」
怒られるかと思ったけど、意外にもキャサリーヌはあっさり承諾してくれた。「それなら私も」とシシィがついてこようとしたけど、キャサリーヌの「死にたいんですの?」の一言で、しゅんとしてその場に座った。
シシィには悪いけど、狩りをする姿はあまり見せたくないし、速やかに獲物を屠るには一人のほうが都合がいい。僕は羽織っていた毛皮のマントとガーティレイの斧をその場に残し、ダッと青と緑の境目を目掛けて走り出した。
まず最初に仕留めたいのは、草原の彼方に見える胡椒粒ほどの点だ。匂いからすると牛型の魔物。見るからに大きく、普通の牛の二倍はある。この草原に生えている香りの良い草や、小麦のような穂のある草を主食にしているとしたら味も期待できる。これは是非とも狩っておきたい。
ある程度近付いた僕は、息を潜め風下からそっと獲物に忍び寄る。
やはり牛型の魔物で、全身がツルのような緑色の長い毛に覆われていた。額に生えた大きな角は、先端が三角形を描くような形で根本から三本に枝分かれしている。魔法器官と思って間違いないだろう。バリアなどの防御系か、はたまた筋力向上などの強化系か。あるいは火球や岩を作って飛ばす攻撃系かもしれない。あらゆる可能性が考えられる。バリアだった場合は指弾や投擲などの遠距離攻撃は効かないと思ったほうが良い。まあどのみち、コントロールが不調だから使うつもりもないのだけれど。
僕は慎重に距離を詰めて、一気に牛に向かって走る。
僕に気付いた牛は「ブモッ」と驚いたように声を上げ、頭を振って角の間から僕の頭ほどの直径の光線を飛ばす。なかなか速いし、狙いも良い。光線は猛烈な熱を伴って、腹を目掛けて飛んでくる。僕はその下をくぐり抜ける。
転がりながら牛の腹の下に潜り込み、両足で牛を空中へ押し出した。牛は空高く舞い上がり、休憩地点の方角へ飛んでいく。ぐっとしゃがみ込んで飛び上がり、牛に追いつく。みんなのほうに光線を飛ばさないよう頭を押さえつけ、着地と同時に山刀で心臓を一突きにする。これでまず一体。
「相変わらず早ぇな、おい」
「こいつだけは意地でも三体狩りたいからね」
半ば呆れたような顔をしたシシィに親指を立てて、僕は再び草原に駆け出す。
「おーい、私が倒せそうな魔物見つけたら、生け捕りで持ってきてくれー! 余裕あったらで良いからー!」
返事の代わりに僕は高くジャンプをして、ついでに周辺の環境を把握した。さっきと同じ要領で二体目、三体目を狩り、処理を施してから新たな獲物を探す。雨水が溜まった池の周辺に、何種類もの生物が集まっているのを見つけたので、美味しそうなものを一通り仕留めてみる。
カエルに似たヤツ、水鳥に似たヤツ。他にもエビ、ネズミ、トカゲ、イタチなどなど、色々いた。どれもこれまで見たことのない、模様や色や形をしていて、味見をするのが楽しみだ。ポーチから大型のスライム製バッグを取り出し、それぞれをスライムシートで包んで、食べられそうな草や果実、氷と一緒に詰め込む。そうしてヒューマを一人詰め込んだほどのサイズまで膨らんだバッグと、シシィのリクエストに合いそうな深緑色の生物を抱えて、僕は休憩地点に戻った。
「とっても豊かな場所ですね。生き物も植物もいっぱいいましたよ。あ、シシィ、お土産これで良いかな?」
「「「ぎゃあああああ!! なんだそれえええええ!!」」」
バッグを下ろし、捕まえてきた袋状の生物を掲げると、ガーティレイ、ヴィオレッタ、ケイシイの三人が悲鳴を上げた。座ったままものすごい勢いで後ずさっていく。
「うわぁ、ヒルかぁ……。こいつ剣効く?」
「よっぽど切れる剣じゃないと切れないと思う。打撃もたぶん衝撃を吸収しちゃうんじゃないかな」
「うーん、この剣の冷却効果で凍らせてけばなんとかなるかなぁ……」
「ル、ルゥが冷却エリア作りましゅよ!」
「そりゃ助かる! じゃあ連携して仕留めようぜ!」
シシィとルゥは作戦を打ち合わせて、戦闘態勢に入った。
「じゃあ放すね」
「「「やめろおおおおお!! キモイキモイキモイ!!」」」
手を放すとヒルは、にゅーっと身体を伸ばし、先端にある口をぶんぶんと振って暴れる。ガーティレイたちはその様子がよほど気持ち悪いのか、さっきより大きな悲鳴を上げた。ヒルがびょんっと飛び跳ねる姿を見ると、もうとても座ってはいられないとばかりに立ち上がり、我先に木の上に避難しだす。あのヒルが木に登れることは教えないほうが良さそうだ。
「危なかったら助けに入るけど気をつけてね」
「お主は解体作業があるのでしょう? 二人はワシが見ておりますわ」
間合いを取ってヒルに攻撃を仕掛けるシシィたちに声をかけると、キャサリーヌが交代を申し出てくれた。処理は早いほうが良いので、僕はありがたく交代してもらうことにした。
獲れた獲物を並べるとオルナダ様たちが集まってきて「大猟だな」と褒めてくれた。しっぽがふりふり揺れる。
「外敵が少ないのか、どれもあまり速くなくて狩りやすかったからですね。障害物が少なくて飛びかかり易いですし」
「フューくんは謙虚なのね。速くないというよりは、フューくんのスピードが圧倒的に上回ってた感じだったのに」
「ていうか、これだけ動けるのになんで指揮と援護なんてやってたのよ! ここまで出たヤツなんて、みんなあの牛以下の戦闘力だったのに! べ、別に褒めてるわけじゃないけど!」
「ふふん。わからないのか、ヒーゼリオフ」
ヒーゼリオフが怒ったようにそっぽを向くと、オルナダ様が含み笑いをした。
「フューリはな、良い子なんだ」
言われて二人はハッとしたような顔をした。オルナダ様のほうはキマったと言わんばかりのドヤ顔だ。なんだかよくわからないけど、オルナダ様が楽しそうで僕は嬉しかった。
手早く処理を済ませて、食べない部位や持ち帰ってもダメになりそうな部位をその場に埋め、三体目の獲物をしまいに行った。戻るとちょうどシシィたちがヒルに止めを刺し終えたところで、ガーティレイたちがそろそろと木から降りてきていた。シシィはキャサリーヌに今の戦闘についての評価を尋ねて、ルゥとハイタッチをしている。上手に倒せたみたいだ。
「では、そろそろ帰還しますわよ」
「楽しかったでしゅねぇ」
「明日も楽しみだな」
出発の準備を終えて僕らは帰路につく。帰りはキャサリーヌが殿を、僕とオルナダ様たち魔族が先頭を務めることになった。まだ体力に余裕のあるシシィとルゥは楽しげにおしゃべりをして歩き、ガーティレイとヴィオレッタはさっきのヒルの姿が頭に焼き付いているのか、まだ顔色が良くなかった。
ガーティレイが斧を返せとは言わなかったので、僕は斧と獲物が詰まったバックを背負った状態で大盾を構え先頭を歩く。荷物持ち専門の役職、ポーターと、盾役を兼任している状態だ。だけどこれは編成としてはあまりよろしくないだろう。
別に重くはないので、荷物を持つのは構わないのだけど、攻撃を受ける盾役が荷物を持っていたら、万が一の際に荷物がダメになる可能性が高い。小説で読んだ知識では、ポーターは守りやすいよう盾役のすぐ後ろにするのが定石だったはずだ。
盾役とポーターを同時に任されるということは、それだけ信頼されているということかもしれない。
「おい、クソ犬、もっとペースを上げろ。早く戻ってさっきの牛肉を食うぞ」
そんなことを考えていると、後ろでガーティレイがお腹の音と一緒に声を上げた。
「いえ、みんな疲れてますからこのペースでいきます。それにあれは今日は食べられませんよ?」
「な、なに!? 貴様、食うためにアレを狩ったんじゃないのか!?」
「そうですけど、あの牛の肉はたぶん熟成させたほうが美味しいのでですね……」
「適当なことを言いおって、独り占めにする気だろう!」
ガーティレイは隊列を乱して、ずんずんと僕に詰め寄ってきた。そりゃあ僕だってすぐ食べれるものならすぐ食べたい。だけどあの牛の肉はかなり硬いのだ。僕でも顎が疲れるだろうし、仕留めたてで旨味も少ない。食べても美味しくないことはわかりきっている。
「内臓は熟成させないだろう。それなら食えるんじゃないか?」
「あぁ、はい。内臓は食べられますけど……。でもご飯ってもう用意されてますよね?」
「内臓が増えた分、減らせばいい。調理の準備しとくよう連絡しといてやる」
「よし、すぐしろ、今しろ!」
オルナダ様もあの牛を食べたいのか、魔法でさっと地上の調理班に呼び掛け準備を指示した。調理班の人たちは「新種の魔物の内臓ですか!?」と驚愕していたけど、オルナダ様は「その分野に詳しい狩人がいるから心配ない」と説得してしまった。どうやら僕は戻ってから本職の料理人に調理法を教えなければならないらしい。美味しいご飯のためなら喜んでとも思うけど、僕が作れるのはあくまで狩人飯とでも言うべき無骨な料理だ。オルナダ様のご飯を作っているような料理人に教えることなんてあるだろうか?
幾許かの不安を抱きつつ、僕はペースを守って帰り道を進んだ。


第九話公開しました。

ヒルが出てきたので軽くググったのですが、あいつら本当に飛び跳ねるらしいのでビックリです。
動画も一、二本見ましたが、動きもなかなかにキモかったですよ。

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百合ドリル

 
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